*触れられた頬* ―冬―
[4]救いと涙
モモはこの見える景色も、自分を囲う感覚も──全てが夢であれば良いと思っていた。
「ずっと離れてたんだ。モモが答えなんて出せないの、分かるって。でもきっと、触れれば思い出すよ……僕がどんなにモモを好きだったかを……触れて、一気に取り戻したい」
「……? ……!?」
──やだ……放してっ……洸ちゃん!
モモはそう言ったつもりなのに、それは音声になっていなかった。
モモの抗おうとする力は全部洸騎に吸い取られ、震えすら出てこなかった。
声どころか唇が動かない。
何もかも時が止まったように、けれど自分を抱えた洸騎だけは自由だった。
──誰か……助けて……お願い……先輩──
「モモ~いるか? 団長が何か用だって……え……?」
あわや二人の唇が重なる寸前、タイミング良く入ってきたのは暮だった。
「……ご、ごめん! ……あたし、行かなくちゃっ」
その途端に硬直が解けたモモは、洸騎の顔を見ることなく出口に突っ走った。
暮の横をすり抜けて、一気に表に飛び出した。
「君は……?」
目の前の光景にあっけに取られた暮は、しかし次の瞬間には冷静に、少年と青年の狭間といった雰囲気の洸騎に尋ねる。
「さぁね。別に怪しい者じゃない。ちゃんとモモの知り合いではありますよ」
椅子に掛けていた上着を手に取り、洸騎は冷やかな視線を投げる暮に、すれ違いざま小さく会釈をした。
その口元は何処となく不敵な笑みを浮かべ、無言で振り向き見送る暮には、嫌な不安だけが残されていた──。
☆ ☆ ☆
「ずっと離れてたんだ。モモが答えなんて出せないの、分かるって。でもきっと、触れれば思い出すよ……僕がどんなにモモを好きだったかを……触れて、一気に取り戻したい」
「……? ……!?」
──やだ……放してっ……洸ちゃん!
モモはそう言ったつもりなのに、それは音声になっていなかった。
モモの抗おうとする力は全部洸騎に吸い取られ、震えすら出てこなかった。
声どころか唇が動かない。
何もかも時が止まったように、けれど自分を抱えた洸騎だけは自由だった。
──誰か……助けて……お願い……先輩──
「モモ~いるか? 団長が何か用だって……え……?」
あわや二人の唇が重なる寸前、タイミング良く入ってきたのは暮だった。
「……ご、ごめん! ……あたし、行かなくちゃっ」
その途端に硬直が解けたモモは、洸騎の顔を見ることなく出口に突っ走った。
暮の横をすり抜けて、一気に表に飛び出した。
「君は……?」
目の前の光景にあっけに取られた暮は、しかし次の瞬間には冷静に、少年と青年の狭間といった雰囲気の洸騎に尋ねる。
「さぁね。別に怪しい者じゃない。ちゃんとモモの知り合いではありますよ」
椅子に掛けていた上着を手に取り、洸騎は冷やかな視線を投げる暮に、すれ違いざま小さく会釈をした。
その口元は何処となく不敵な笑みを浮かべ、無言で振り向き見送る暮には、嫌な不安だけが残されていた──。
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