*触れられた頬* ―冬―

[35]谷と山

 それから四十分後──。

「……何か……露出度、高くないか……?」

 目の前で腰に両手を当て、仁王立ちした凪徒が、うっすら赤面しながら眉間に(しわ)を寄せ、モモを見下ろしていた。

「あ、あんまりっ、見ないでください!」

 明らかに彼の視線が自分の胸の真ん中を(とら)えていることに気付いたモモは、思わず自分の両腕で肩を抱き締め隠そうとした。

 けれどそれは余計にその縦に走るラインを深くすることになって、さすがの凪徒も顔を横へ(そむ)けた。

「だ、だぁれが、お前のなんか見るかよっ」

 ──む、矛盾してる……今朝は見せるつもりじゃなくても、勝手に見たくせに~!

 モモはそう言い返したい気持ちを押し殺して、抗議の視線をキッと上げてみせた。

「仕方ないじゃないですか……皆さん身長があって、これしか合う衣装がなかったんですから」

 モモが身に着けていたのはバレリーナのチュチュのような、上下半身とも必要最低限しか隠してくれない純白の本番着だった。


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