*触れられた頬* ―冬―
 そんなことで笑われているとも知らずに、衣装室で独り着替えを始めたモモは、

「Can you speak English, Momo?(モモは英語話せるの?)」

 部屋には自分だけだと思っていたことと、いきなり声を掛けられたことで、刹那にビクンと背中を反らせてしまった。

「あ……ニーナさん……い、Yes, a little(少しだけなら)……」

 自分のシャツで胸元を隠し、モモは振り返って苦笑いを返す。

 衣装合わせの際に自己紹介をしていたニーナが、後ろで笑顔を見せていた。

 彼女はニクーリンの衣装係で、モモより三つばかり年上の北欧系美人だ。

「Nagito is your partner in Japan, isn’t he?(ナギトは日本でも貴女のパートナーなんでしょ?)」

 ニーナはモモの脱いだチュチュ風衣装を手に取って、ハンガーに掛けながら隣の少女を碧い瞳で覗き込んだ。

「Yes(はい)……」

「He loves you, very much.(彼は貴女のことがとっても大切なのね)」

「え……? えっ!?」

 ──ラブって聞こえたけど、勘違いよね?

 思わず着替える手が止まってしまうモモ。

「Because(だって)……」

 すぐ傍のラックに腰掛けてモモを見上げる。ニーナは少しもったいぶったように言葉を途切れさせ、


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