*触れられた頬* ―冬―
 二人は見送ってくれた団員達にお礼を言い、歩いて椿のアパートへ向かった。

 既に夕闇が落ち始めて、昨夜降った雪の上は、淡い蜜色のヴェールに(まと)われているようだ。

「先輩、本当に有難うございます!!」

 モモは何度そう言っても、言い切れない気持ちがしていた。

 まさかやっと巡り会えた母親に、日本からこんなに遠い地で自分の舞を見せられるだなどと、考えることすらなかったというのに──。

「礼はいいから、明日しっかりやれよ?」

「はいっ!!」

 凪徒はモモのはつらつとした返事と笑顔に、やはりいつもと違う感覚を得ていた。

 ──何だろう? 何を考えている?

 しばらく(こご)える路地を歩いた先に、あの美しいレモン色の外壁が現れた。

 昨日と同じくエレベーターで辿(たど)り着いた六階にて、二人は同じカミエーリアの微笑みに優しく迎えられた。

「コンニチハ、モモ、ナギト……オゲンキデスカ?」

「わーっ、凄い! カミエーリアさん、こんにちは! お、お元気です~」

「お前が日本語おかしくなってどうすんだよ」

「あれ? あ、はい~」

 恥ずかしそうに舌を出し、後ろ髪を掻き出すモモ。

 カミエーリアの温かな手に繋がれて、更に暖かな部屋と母親の許へと招かれていった──。


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