*触れられた頬* ―冬―
[37]楽しい食事と切ない質問
ダイニングの扉のこちら側で、椿はそわそわしながら待っていた。
複数の足音が近付いて、目の前の立ち塞がれていた空間が一気に開かれる。
その勢いに思わず両手を伸ばしていたが、すぐに胸元へ娘の喜ぶ顔と、サラサラとした髪の感触が雪崩れ込んできた。
「いらっしゃい、桃瀬!」
「お母さん……!」
ああ、昨日の出来事は夢などではなかったのだと、二人は心の奥底で深く安堵した。
テーブルに誘って昨夜のように席に着く。
ニコニコと笑顔を見合わせて、沢山話したいことがある筈なのに、想いが溢れて言葉にならなかった。
やがてカミエーリアが大皿にたっぷりと、ロシアの代表的なご馳走ビーフストロガノフを運んできて、その湯気の立つ香り豊かな味わいに、凪徒とモモは大興奮の声を上げた。
「喜んでもらえて良かったわ。ほんのちょっとだけど……私も手伝ったの」
はにかむ椿と満足そうなカミエーリアも、予想以上の好反応を嬉しく思いながら、他にもピロシキやキノコのマリネなどを勧めて、いつになく賑やかな夕餉を楽しんだ。
複数の足音が近付いて、目の前の立ち塞がれていた空間が一気に開かれる。
その勢いに思わず両手を伸ばしていたが、すぐに胸元へ娘の喜ぶ顔と、サラサラとした髪の感触が雪崩れ込んできた。
「いらっしゃい、桃瀬!」
「お母さん……!」
ああ、昨日の出来事は夢などではなかったのだと、二人は心の奥底で深く安堵した。
テーブルに誘って昨夜のように席に着く。
ニコニコと笑顔を見合わせて、沢山話したいことがある筈なのに、想いが溢れて言葉にならなかった。
やがてカミエーリアが大皿にたっぷりと、ロシアの代表的なご馳走ビーフストロガノフを運んできて、その湯気の立つ香り豊かな味わいに、凪徒とモモは大興奮の声を上げた。
「喜んでもらえて良かったわ。ほんのちょっとだけど……私も手伝ったの」
はにかむ椿と満足そうなカミエーリアも、予想以上の好反応を嬉しく思いながら、他にもピロシキやキノコのマリネなどを勧めて、いつになく賑やかな夕餉を楽しんだ。