*触れられた頬* ―冬―
「ごめん……なさいね、桃、瀬……貴女のお誕生日は三月三日。桃の節句……まだ桃の咲く頃ではなかったけれど、病院には看護師さん達が作った綺麗な桃のお花の飾りが沢山有って……それで『桃瀬』と名付けたのよ……」
「三月三日……おひなさまの日」
モモは微かに口角を上げて、噛みしめるようにその数字を繰り返した。
施設に預けられた十四日が誕生日とされてきたが、その十一日前に生まれたのだ。
──三日か……。
そして凪徒も心の中で繰り返す。
もうあと五日後だ。それでモモは……──。
「そ……なんだ。三日……良かった。ひな祭りが誕生日なんて、絶対忘れないね」
椿の弱々しい視線に、モモは感慨深そうな笑みを返した。
もちろん椿が施設に告げなかったことを、責める気持ちなど毛頭なかった。
それから沈黙はしばし続き、椿は未だ知らぬ次の質問に、緊張を隠せなくなって俯いてしまった。
彼女には名前以外何も教えてあげられなかったのだと、改めて離れていた十八年という長さと重さを感じていた。
「三月三日……おひなさまの日」
モモは微かに口角を上げて、噛みしめるようにその数字を繰り返した。
施設に預けられた十四日が誕生日とされてきたが、その十一日前に生まれたのだ。
──三日か……。
そして凪徒も心の中で繰り返す。
もうあと五日後だ。それでモモは……──。
「そ……なんだ。三日……良かった。ひな祭りが誕生日なんて、絶対忘れないね」
椿の弱々しい視線に、モモは感慨深そうな笑みを返した。
もちろん椿が施設に告げなかったことを、責める気持ちなど毛頭なかった。
それから沈黙はしばし続き、椿は未だ知らぬ次の質問に、緊張を隠せなくなって俯いてしまった。
彼女には名前以外何も教えてあげられなかったのだと、改めて離れていた十八年という長さと重さを感じていた。