*触れられた頬* ―冬―
「な、なんか昨日とはエラい変わりようだな……」

 嬉しそうなモモの前で、凪徒の戸惑う様子も昨日とはまた少し違っていた。

「え……? あ、ダメですか?」

 自分は特上満足していたので、その反応にモモもいささか困惑する。

「ああ、いや。衣装はいいんじゃねぇの。でも髪は随分ひっつめられたなぁと思ってさ」

 あの後ニーナは櫛と髪留めを取りに行き、モモの垂らした髪を後ろ上方でお団子に結い上げたのだ。

「に、似合わないですか? この方が舞うのに邪魔にならないだろうって、ニーナさんが」

 これなら更に「やりやすい」。

 モモは益々今日の演舞に自信をみなぎらせていたのだが。

「別に~お前が気に入ってるなら、それでいいだろ」

 ──相変わらずつれないなぁ……。

 そうは思いながらも、確かに自分は満足したのだから、これで行こうと気持ちを改めた。

 ──何やかんや、友達作ってんだな。

 颯爽と支柱に向かうモモのお団子頭を見つめて、凪徒はクスッと笑ってみせた。

 今から約二時間後──披露される二人の晴れやかな舞台。

 その最終調整(リハーサル)が始まった──。


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