*触れられた頬* ―冬―
 突然地上から地鳴りのような観衆の声が湧き上がってきた。

 寸でのところで凪徒はモモの手首をつかみ、大技は最上級の形で成功していた。

 ──スタンド・スピン三回転。モモにとって初めての完成──。

 ──こいつ……とうとうやりやがった……!!

 モモの手首を握り締める手が一瞬震えた。

 モモがこの技で回転出来たのは、どうやっても二回転半までだったのだ。

 が、それでは後ろ向きでキャッチされる状態になるので、危険を避ける為に二回転までと決めていた。

「やったな! モモ」

 遠いロシアでの二人の華麗なショーは、完璧以上のレベルで幕を降ろした。

 ステージの真ん中に走り寄り、凪徒はモモに喜びの笑みと声を掛けた。

 モモも満足そうに笑顔で見上げる。

「だが……お前、後でお仕置きだっ」

「え……?」

 一転オオカミのような牙を見せ、グシャグシャとモモのお団子を掻き乱した。

「何で先に言わねぇんだよ!」

「す、すみません~出来るか分からなかったので……」

 首を上下に振られながら、苦笑いと謝罪を続けるモモ。

 「出来なかったらどうするつもりだったんだ!? あんまり心配させんな!!」と一喝され、やっと解放されて髪をそそくさと整えた。


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