*触れられた頬* ―冬―
[48]謝る影と感謝する影
二人を乗せた航空機は定刻二十一時に出立し、翌三月二日の正午を少し越えて無事に到着を果たした。
この時間では暮達は公演の真っ最中である為、高速バスを利用することにして、出発の時とは別の地へと移動した珠園サーカスを目指した。
夜を飛び越えながらのフライトは、様々な達成感や充足感に満たされて、二人は狭いながらも安眠を得た。
バスの中では久々に見る日本の風景にぼんやり目をやりながら、いつの間にか最寄りのバス・ターミナルに辿り着いていた。
「モモ、歩くか? タクシー乗るか?」
「あたしは大丈夫です」
距離は遠くないが少々上り坂になる為、凪徒はモモを気遣って問い掛けた。
が、モモは疲れた様子もなく、スーツケースを押しながらズンズンと手前を歩き出す。
ロシアに比べれば棘のない空気に、夕陽の温かみのある色が重なって、白い吐息もいつしか消えていた。
十五分も歩いた頃にはサーカスのテントのてっぺんが見えて、流れていた心が堰き止められるように胸の詰まる想いがした。
懐かしさと、嬉しさと……切ない気持ち。
この時間では暮達は公演の真っ最中である為、高速バスを利用することにして、出発の時とは別の地へと移動した珠園サーカスを目指した。
夜を飛び越えながらのフライトは、様々な達成感や充足感に満たされて、二人は狭いながらも安眠を得た。
バスの中では久々に見る日本の風景にぼんやり目をやりながら、いつの間にか最寄りのバス・ターミナルに辿り着いていた。
「モモ、歩くか? タクシー乗るか?」
「あたしは大丈夫です」
距離は遠くないが少々上り坂になる為、凪徒はモモを気遣って問い掛けた。
が、モモは疲れた様子もなく、スーツケースを押しながらズンズンと手前を歩き出す。
ロシアに比べれば棘のない空気に、夕陽の温かみのある色が重なって、白い吐息もいつしか消えていた。
十五分も歩いた頃にはサーカスのテントのてっぺんが見えて、流れていた心が堰き止められるように胸の詰まる想いがした。
懐かしさと、嬉しさと……切ない気持ち。