*触れられた頬* ―冬―
「……でも……モモは、貴方に恋してる。桜さん、貴方もそれに気付いているんですよね?」

 洸騎は一時(いっとき)も凪徒の視線を外さず、(またた)きすらもせずに、剛速球とも言えるその質問を、真っ正面の凪徒に叩きつけた。

「あいつが誰を好きかなんて、あいつしか知らないことだ」

 凪徒も投げられた光の球を()けることはせずに、炎を灯して投げ返した。

「さすがに格好良いこと言いますね……そういう桜さんはどうなんです? モモのこと、どう思ってるんですか?」

 凪徒の目力が強くなったことを感じて、洸騎もその眼に意志を込める。

 凪徒は少年の勇気ある問いに、真摯(しんし)な答えを手渡した。



「俺もモモのことが好きだ。ちゃんと、恋愛対象として」



「えっ?」

 思いがけない言葉に、意識して集中させていた筈の瞳を、洸騎は揺るがせてしまっていた。

「へぇ……意外に正直なんですね」

「そちらが本音で話しているのに、こっちが隠すのはフェアじゃないだろう?」

 凪徒はそう言ってフッとした笑みを口角に宿したが、初めて口にした自分の気持ちに、しばらく背中を温めるストーブの熱が無性に熱く感じられた。


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