*触れられた頬* ―冬―
 モモはそんな凪徒の悲壮な言葉を切なく思いながらも、自分を必要としてくれていることに、喜びと感謝の気持ちで一杯だった。

「あたし……オールド・サーカスで、先輩とちゃんと飛べたら……きっと何処でもやっていけるって思ったんです……」

 モモは拘束されたきつい腕の中で、(わず)かに右腕を上げ、凪徒の袖にそっと触れた。

「モモ……」

「この三年間、先輩に教えてもらった沢山のことは、きっと忘れることはないって。その知識とみんなとの楽しかった想い出さえあれば、その……パートナーが誰であっても……ちゃんと飛べる筈だって……」

「お前、俺を『相棒』だって言ったじゃないかよっ」

 激しくなる声と共に、抱き締める力も強くなって、モモはそれでなくとも息の止まりそうな高鳴る胸から、心臓が飛び出しそうな気分だった。

「先輩、ありがとうございます。でも……あの、聞いてください──」

 モモは凪徒の手首を柔らかく握り締め、あの団長室前ですれ違った後の出来事を、たどたどしく話し出した──。





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