*触れられた頬* ―冬―
「タカちゃん・ハヤちゃん・杏奈さん、まぁまぁ立ち話もなんだから、とりあえずお座りくださいの」

 追加した折り畳み椅子には団長・茉柚子・モモ、挨拶と簡単な自己紹介をされた園長は勧められて、にこやかな新客三名と共にソファへ腰を降ろした。

 サーカス以外で自分の知る大人達が勢揃いした異様な光景に、モモはこれから何が始まるのだろうと視線を右往左往させた。

「モモちゃん、覚えてる? 昨年の夏、貴女を連れて桜の本社へ出向いた時、話したこと」

「え? あ、はい……」

 モモは突然掛けられた杏奈の質問に、戸惑いながらも想いを馳せた。

 あの涼やかなロビーで凪徒の出生に放心し、告げられた言葉の数々。

 凪徒が高校時代に経営学を学んだこと、新しい事業の為に凪徒に戻ってきてほしいのだと──

「あの『新規事業』って、【育児・教育】部門なのよね」

「「「え……?」」」

 園長・茉柚子とモモの驚きが口から(こぼ)れた。


< 220 / 238 >

この作品をシェア

pagetop