*触れられた頬* ―冬―
それから数日後。
桜社長と高岡紳士は決められた日時に施設を訪れ、園長との正式な契約が交わされた。
二人の取り計らいで、洸騎がクライアントに依頼した交換条件も、何のお咎めもなく反故にされ、全ては順調に運び、穏やかな日常が取り戻された。
そんな三月の、モモの『昔』の誕生日──。
「うん、大丈夫。もうすぐ桜の綺麗な町へ移動するの。そう、毎年必ずこの時期に公演する所。桜が満開になったら、お母さんに写メ送るからね。あ……暮さん……うん、ピエロのお兄さんが呼んでるから、これで切るね。まだモスクワは寒いでしょうから、お母さんも身体に気を付けて! はーい、それじゃ……」
モモは暖かな陽差しに包まれたベンチにて、買い換えたスマートフォンから、椿とインターネット通話を楽しんでいた。
「あ、わりい……母さんと電話してたのか?」
手を振りながら駆け寄ってきた暮が、モモの笑顔から電話の相手を割り出した。
隣に腰掛け、申し訳なさそうな表情を寄せる。
「あ、はい。でもそろそろ終わりにしようと思っていたところでしたから」
暮は少女の満足気な様子を感じ取り安堵したが、しかし少々切なそうにその顔を覗き込んだ。
桜社長と高岡紳士は決められた日時に施設を訪れ、園長との正式な契約が交わされた。
二人の取り計らいで、洸騎がクライアントに依頼した交換条件も、何のお咎めもなく反故にされ、全ては順調に運び、穏やかな日常が取り戻された。
そんな三月の、モモの『昔』の誕生日──。
「うん、大丈夫。もうすぐ桜の綺麗な町へ移動するの。そう、毎年必ずこの時期に公演する所。桜が満開になったら、お母さんに写メ送るからね。あ……暮さん……うん、ピエロのお兄さんが呼んでるから、これで切るね。まだモスクワは寒いでしょうから、お母さんも身体に気を付けて! はーい、それじゃ……」
モモは暖かな陽差しに包まれたベンチにて、買い換えたスマートフォンから、椿とインターネット通話を楽しんでいた。
「あ、わりい……母さんと電話してたのか?」
手を振りながら駆け寄ってきた暮が、モモの笑顔から電話の相手を割り出した。
隣に腰掛け、申し訳なさそうな表情を寄せる。
「あ、はい。でもそろそろ終わりにしようと思っていたところでしたから」
暮は少女の満足気な様子を感じ取り安堵したが、しかし少々切なそうにその顔を覗き込んだ。