*触れられた頬* ―冬―
[7]きっかけと心の言葉
「ごめんなさいね、貧血気味なのかしら……最近ちょっと調子が悪くて……」
「いえ、そんな時にすみません……あの、今日はこの辺で……」
カーテンの向こうから蒼白い顔で現れた夫人へ、慌てて退席の意を口にしたが、夫人は「大丈夫だから、もう少しいてちょうだい」と、二人は再び元の席に収まった。
「ね……あんまり思い出したくないと思うけれど……モモちゃんは、あのプレハブで洸騎君に抱き締められてしまったのよね……?」
「は、はい……」
夫人は一度紅茶を飲み、その温かみとコタツの熱で、少しだけ顔色を戻して尋ねた。
「洸騎君、ちょっと焦っていたのかもしれないわね……離れていた二年半の間に、モモちゃんに好きな人が出来てしまったんじゃないかって。女性って──今はそうでもないのかもしれないけれど──どちらかと言ったら受け身な存在でしょ? 世の中には『俺について来い』タイプの男性を好きな女性もいるから、男の人って時に勘違いしてしまうのよ。強引に攻めれば、女性もその気になるのではないかって」
「は、ぁ……」
モモは夫人の会話の中身よりも、その話の間に見せた少女のようなにこやかな微笑みに驚き、不自然な相槌を返していた。
「いえ、そんな時にすみません……あの、今日はこの辺で……」
カーテンの向こうから蒼白い顔で現れた夫人へ、慌てて退席の意を口にしたが、夫人は「大丈夫だから、もう少しいてちょうだい」と、二人は再び元の席に収まった。
「ね……あんまり思い出したくないと思うけれど……モモちゃんは、あのプレハブで洸騎君に抱き締められてしまったのよね……?」
「は、はい……」
夫人は一度紅茶を飲み、その温かみとコタツの熱で、少しだけ顔色を戻して尋ねた。
「洸騎君、ちょっと焦っていたのかもしれないわね……離れていた二年半の間に、モモちゃんに好きな人が出来てしまったんじゃないかって。女性って──今はそうでもないのかもしれないけれど──どちらかと言ったら受け身な存在でしょ? 世の中には『俺について来い』タイプの男性を好きな女性もいるから、男の人って時に勘違いしてしまうのよ。強引に攻めれば、女性もその気になるのではないかって」
「は、ぁ……」
モモは夫人の会話の中身よりも、その話の間に見せた少女のようなにこやかな微笑みに驚き、不自然な相槌を返していた。