*触れられた頬* ―冬―
[8]巣立ちと巣戻り
鈴原夫人のお陰で平常心を取り戻したモモは、月曜・火曜の公演を満足の行く演舞で終え、休演日である水曜の朝を迎えていた。
日曜の再会で渡しそびれてしまったサーカスのパンフレットを数冊鞄に詰め、テント傍の洋菓子店でラスクを数袋買う。
冬季限定のチョコレートでコーティングされたラスクは、行列が出来る程の人気振りだが、平日の開店すぐに訪れたので並ぶことなく購入出来た。
それから最寄りのバス停まで歩いて、鼻が痛くなるような張り詰めた冷たい空気の中を待ち、十五分程でやって来た市バスに乗り込んだ。
車窓からの風景は自分がいた頃とは違い、随分都会に近付いた感じがする。
待った時間と同じ位で目的地に到着し、其処から再び五分程歩いて、二年半振りの故郷に足を踏み入れた。
「あっ! モモお姉ちゃんだ~約束通り来てくれた!!」
先日会えた小学生低学年組は、敷地内にある滑り台から勢い良く降りて走り寄り、モモからパンフレットを受け取った。
彼等の冷たい手に引かれて建物の入り口を目指す。
今日は創立五十周年記念の為に小学校は休みだと言うので、「園長室に行くから後でね」と約束し、長い廊下をずっと進んで、一番東の突き当り──園長室の扉をノックした。
日曜の再会で渡しそびれてしまったサーカスのパンフレットを数冊鞄に詰め、テント傍の洋菓子店でラスクを数袋買う。
冬季限定のチョコレートでコーティングされたラスクは、行列が出来る程の人気振りだが、平日の開店すぐに訪れたので並ぶことなく購入出来た。
それから最寄りのバス停まで歩いて、鼻が痛くなるような張り詰めた冷たい空気の中を待ち、十五分程でやって来た市バスに乗り込んだ。
車窓からの風景は自分がいた頃とは違い、随分都会に近付いた感じがする。
待った時間と同じ位で目的地に到着し、其処から再び五分程歩いて、二年半振りの故郷に足を踏み入れた。
「あっ! モモお姉ちゃんだ~約束通り来てくれた!!」
先日会えた小学生低学年組は、敷地内にある滑り台から勢い良く降りて走り寄り、モモからパンフレットを受け取った。
彼等の冷たい手に引かれて建物の入り口を目指す。
今日は創立五十周年記念の為に小学校は休みだと言うので、「園長室に行くから後でね」と約束し、長い廊下をずっと進んで、一番東の突き当り──園長室の扉をノックした。