*触れられた頬* ―冬―
[10]標的と思惑
茉柚子のお願いに何も返せず、モモは驚きの表情を元に戻すまで、数十秒は掛かってしまった。
「あの……」
やっと口から零れた言葉が、次第に身体をほぐしていく。
「助けるって……あたしが戻ることで……?」
空中ブランコ以外に能のない自分が、どうしたら此処の役に立つのか?
本来であれば自分が就く筈だった園長の補佐はもう茉柚子がやっている。──それなのに、何故?
「さっき話した劇場のことなんだけど……」
茉柚子はやっと話を始めたが、その言い出しは質問した答えに程遠そうに思えた。
「知ってる? 最近海外で流行っているサーカスを源流としたエンターテイメント。一つのストーリーを様々な歌や踊りや技で作り上げた……日本でも時々巡回公演されているでしょ?」
「はい……」
モモも同業の端くれとして注目はしていた。が、テレビのドキュメンタリーやCMで知る程度だ。
「此処に建つ劇場で常設公演されるのよ。もちろん殆どは元から勤めているメンバーで構成されるらしいのだけど、三割程は募集を掛けるのだそう。其処にね……モモ、是非貴女が欲しいって、劇団のプロデューサーが」
「え!?」
──あ、あたしを!?
「あの……」
やっと口から零れた言葉が、次第に身体をほぐしていく。
「助けるって……あたしが戻ることで……?」
空中ブランコ以外に能のない自分が、どうしたら此処の役に立つのか?
本来であれば自分が就く筈だった園長の補佐はもう茉柚子がやっている。──それなのに、何故?
「さっき話した劇場のことなんだけど……」
茉柚子はやっと話を始めたが、その言い出しは質問した答えに程遠そうに思えた。
「知ってる? 最近海外で流行っているサーカスを源流としたエンターテイメント。一つのストーリーを様々な歌や踊りや技で作り上げた……日本でも時々巡回公演されているでしょ?」
「はい……」
モモも同業の端くれとして注目はしていた。が、テレビのドキュメンタリーやCMで知る程度だ。
「此処に建つ劇場で常設公演されるのよ。もちろん殆どは元から勤めているメンバーで構成されるらしいのだけど、三割程は募集を掛けるのだそう。其処にね……モモ、是非貴女が欲しいって、劇団のプロデューサーが」
「え!?」
──あ、あたしを!?