*触れられた頬* ―冬―
モモはいつの間にかバス停に立ち尽くし、いつの間にかバスに乗って、いつの間にかサーカスの最寄りで降りていた。
敷地の入口で立ち止まる。
ぼおっとした顔がテントを見上げ、頭が真っ白なまま再び俯いた。
コートのポケットにしまわれた携帯が勢い良く震えて、一瞬心臓が飛び出しそうなほど驚いた。
が、やっと正気に戻り、画面を確認しないまま応答した。
「も……もしもし」
「モモ? ……洸騎だけど」
「洸ちゃん……」
今になってみれば未だ先日の抱き締められた事件の方が、今日の驚愕な依頼よりも対処が出来た気持ちがした。
「来たって聞いたよ。何で僕が帰る前に帰っちゃったの?」
「ごめん……」
それきり押し黙ってしまう。
洸騎もモモの消沈振りに気が付いたのか、少し声色を明るくして続きを告げた。
「サーカスの傍にファミレスあるだろ? すぐ行くからさ、其処で待ってて。夕食ご馳走するよ」
「え? あ、あの、でも──」
続きを話す前に切られてしまう。モモは仕方なく振り返り、洸騎の示したファミレスへ足を進めた──。
敷地の入口で立ち止まる。
ぼおっとした顔がテントを見上げ、頭が真っ白なまま再び俯いた。
コートのポケットにしまわれた携帯が勢い良く震えて、一瞬心臓が飛び出しそうなほど驚いた。
が、やっと正気に戻り、画面を確認しないまま応答した。
「も……もしもし」
「モモ? ……洸騎だけど」
「洸ちゃん……」
今になってみれば未だ先日の抱き締められた事件の方が、今日の驚愕な依頼よりも対処が出来た気持ちがした。
「来たって聞いたよ。何で僕が帰る前に帰っちゃったの?」
「ごめん……」
それきり押し黙ってしまう。
洸騎もモモの消沈振りに気が付いたのか、少し声色を明るくして続きを告げた。
「サーカスの傍にファミレスあるだろ? すぐ行くからさ、其処で待ってて。夕食ご馳走するよ」
「え? あ、あの、でも──」
続きを話す前に切られてしまう。モモは仕方なく振り返り、洸騎の示したファミレスへ足を進めた──。