*触れられた頬* ―冬―

[1]光と影

 桜財閥のトップであり凪徒の父である桜 隼人(はやと)社長と、三ツ矢財閥の令嬢、三ツ矢 杏奈(あんな)の壮大な結婚式。

 そして珠園(たまその)サーカス隔年恒例の慰安旅行も(とどこお)りなく終わり、年を越して新しい地での興行が千秋楽を迎えた頃には、木枯らしの吹きすさぶ真っ白な真冬の真っ只中だった。

「う~~~さぶっ!」

 この時期には日本全国の中でも温暖な地域を回るよう巡業が組まれているのだが、今季は例年にも増して厳冬だ。

 最終公演を終えた独身メンバーは身を小さくこごめ、プレハブのストーブを中心にたむろっていた。

(くれ)さん、陣取り過ぎですよ~もう少し僕にもスペース分けてください!」

「お前、未だ若いだろっ、年寄りは大切にするもんだ」

「こんな時だけ年寄りぶって~」

 秀成(ひでなり)のぼやきに突っ込む余裕もなく、(こご)える指先を温める男達。

 反面女性陣がてきぱきと準備を始めていた物とは……?

「あ、それ! オレも食べたいっ」

「食べるんだったら自分で用意してください~」

 ストーブの上に置かれたのは、アルミホイルに包まれたサツマイモやバターの乗ったキノコだった。


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