*触れられた頬* ―冬―
 そんな情景を尻目に、杏奈は自分の携帯を取り出し、何処(どこ)かへ電話を掛け始める。

「ところで団長、この旅の費用は……?」

 杏奈の通話を邪魔しない程度の小声で、凪徒は団長に耳打ちをした。

「桜コーポレーションと高岡プランニングから寄付金が贈られての。団員の『勉強代』に使ってくれと」

「……やっぱり」

 団長の目配せに唇を歪ませる凪徒。

 モモは桜社長と高岡紳士の深い心遣いに、どれだけ感謝をすれば良いのだろうと心の奥を熱くさせた。

「ああ、それから凪徒。──分かってるな?」

 団長はおもむろに何やら念を押し、それに一気に極端な反応を示した凪徒は、

「わぁーかってます!! だから嫌だって言ったんだっ!!」

「先輩……?」

「お、お前は全くもって関係ないから心配すんなっ!!」

 鋭い眼つきと大声で牙をむいた凪徒に、文句をぶつけられても恵比須顔を崩さない団長。

 反面モモは火の()が飛んできた状態で固まった。


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