*触れられた頬* ―冬―
「あたしもあと二年ちょっとで飲めるようになるんですよね! 美味しいって思うのかなぁ?」

 その時、凪徒は昨秋の慰安旅行で起きた『日本酒事件』を思い出し、途端に慌て出した。(Special.1をご参照ください)

「お、お前はやめとけ! 酒になんか呑まれてもロクなことないぞ!!」

 ──またデコピン喰らわされそうになったら、たまったもんじゃない……。

「? ……はい」

 モモは焦る凪徒に疑問だらけの大きな瞳を注いだが、凪徒の口元が益々ヘの字になったので、とりあえずは分からないまま返事をした。

「子供はもう寝る時間だぞー、着いたら全く手掛かりのない母さん探しが始まるんだ、良い子は早く寝とけよ~」

 ガシガシと脳天の髪を掻き乱され、モモは「子供扱いして~」と不服そうに髪を直し、ブランケットを鼻先まで上げて(まぶた)を閉じた。

 ──あたしのお母さん……本当に見つかるのかな。見つかったら……あたしを歓迎してくれるだろうか?

 モモはまだ見ぬ母親のシルエットを思い浮かべながら、お腹の中で聞いた筈の子守唄を、(かす)かな記憶から手繰(たぐ)り、探し出そうと夢の中へ落ちた──。



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