気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
午後三時半。保育園は工房近くのため、到着は四時半頃になる。迎えにはちょうどいい時間だろう。お昼寝から目覚めておやつを食べ、帰り支度も済んでいる頃だ。
(あまり早くお迎えに行くと、もっとお友達と遊びたかったぁって言われちゃうもんね)
たまに仲のいい友達とブランコをしてから帰ると言って聞かず、園庭に寄り道するときもあるくらいだ。
そのときのことを思い出して笑みが零れる。腕時計で時間を確認し、歩行者たちを避けながらカートを押して車まであと少しというときだった。
少し先に立っている人物に視線を一気にさらわれる。その人だけ景色から切り取られたよう。
ドクンと跳ねた心臓がほんの一瞬だけ止まった気がしたかと思えば、直後にものすごいスピードで脈を刻みはじめた。
体は硬直。棒立ちになった足を動かせず、口を半開きにしてその姿を凝視する。
どうして今、こんなところで――。
思いがけない人を前にして立ち止まった美織を、通行人たちが不可解な顔つきで追い越していく。流れに取り残され、完全に置いてきぼりをくってしまった。
(……い、いけない。早く立ち去らなきゃ)
こんなところで会うわけにはいかない。