気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
沖縄へ来た当時、美織は妊娠を打ち明けていなかった。シングルマザーとして子どもを育てていくのを反対されるのはわかりきっていたため、堕胎ができなくなる週数まで内緒にしていたのだ。その週数を待って激白したときですら養子に出そうと提案された。
そうされてもなお、ひとりで産み育てていく決意は変わらず、説得を重ねて今がある。
ひとつだけ想像と違っているのは、陽向を育てているのは美織ひとりの力ではないということ。祖父母はもちろん、美織に関わる人たちのおかげでどうにか暮らしていると言える。
「ふたりの間になにがあったのかは詮索しないが、本当にこのままでいいのか?」
「追いかけなくていいの?」
ふたりが神妙な顔つきで美織に問いかける。
その顔を交互に見つめ返し、でも足はそこから動かせない。
「……もう追いつかないよ。それにきっと二度とここへは来ないと思う」
陽向の登場で、史哉は美織がべつの人と結婚したと思っただろうから。
そもそも遊びだった女にこれ以上執着はしない。再会して、ただ単に懐かしく思っただけ。もしくは、また気楽に遊べると考えたのかもしれない。