気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
世界屈指のホテルグループ、ラ・ルーチェ。吸収や合併を経て全三十あるブランドは百二十の国と地域に広がり、その数はざっと七千軒を超す。
史哉は、三十三歳にしてそのトップに立っている。
美織を失ってからの三年のうちに社長に就任し、無我夢中で駆け抜けてきた。東京湾を臨むベイエリアに構えた本社と世界の各地を飛び回るおかげで余計なことを考えなくて済んだ半面、心の中には空虚な世界が広がっていた。
次々と画面を切り替えていた史哉はふと、マウスを動かしていた手を止める。
美織を工房に訪ねてから一週間が経過した。
やっと会えた彼女が結婚し、子どもまでいた事実がどうにも受け入れられない。あのあと史哉は茫然自失でプライベートジェットに乗り、東京へ帰ってきた。
約三年前、突然目の前から姿を消したのはどうしてなのか。ずっと答えが見つけられず、美織を忘れることもできずにいた。
国際通りで彼女を見つけたとき、真っ先に自分の目を疑った。これまで募らせていた想いが見せた幻影なのではないかと。
いや、それ以前にバンクーバーで出会い、恋に落ちた出来事自体が夢だったのかもしれないと近頃は考えていた。まるで存在自体が最初からなかったような消え方を彼女がしたからだ。
自分ではもちろん調査会社にも依頼して探したが、見つけられなかった。