気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

ふたりの間でよく話題になった沖縄の工房にも足を運んだが、そこに美織はいなかった。

忽然と。そんな言葉がぴったりの失せ方だった。

当時、ラ・ルーチェの社長である史哉の父は病に伏していた。
その隙を突いたのだろう。社長と副社長である史哉の失脚を狙う反対勢力があった。
その動きを察知し、彼らに対抗するために史哉は早々に身を固めて盤石な経営体制をとる方向性で動いていた。

バンクーバーから帰国したのは、父の容態が不安定であったのと、舞い込む数々の縁談に対処するためでもあった。

しかし美織と出会い恋に落ちた史哉は縁談をすべて断り、取り組んでいた海外の大手ホテルチェーンの買収の成功をもってして、その勢力を押さえ込んでいる段階だった。

美織に余計な火の粉が降りかかる可能性もあるため、それが一段落するまでは黙っていよう。
そう決め、父の側近に彼女との関係性を問いただされたときには単なる遊びだとごまかした。

すべては次期社長としての信頼を手にし、美織との結婚を周囲に認めさせるためだった。誰にも異議を唱えさせてなるものか。そんな強い意志に突き動かされていた。

彼女が消えたのは、そんな矢先だった。
< 105 / 309 >

この作品をシェア

pagetop