気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

美織がいない失意の中、買収は成功。父は病を克服して現在も存命だが、体調を最優先に考え、一年前に史哉が社長に就任した。
史哉には弟がいるがラ・ルーチェから離れているため、父の弟であり史哉にとっての叔父が副社長として脇を固める体制である。

この三年の間にも様々な縁談が舞い込んできたが、すべて断り、一生独身を貫く覚悟だった。――父はともかく、叔父は未だにあきらめていないが。

それほどまでに美織を忘れられずにいたのに、彼女はとっくに結婚し、子どもまでいた。

そんな残酷な現実を史哉はまだ受け止めきれずにいる。自分ひとりだけ置いてきぼりにされた気分だ。
だが――。

ひとつの疑惑が不意に浮かんだときだった。社長室のドアがノックされ、開いたそこから秘書の有村(ありむら)理恵子(りえこ)が入室する。

黒いパンツスーツに身を包み、長い髪をシニヨンにしたスタイルは彼女のスタンダード。奥二重瞼の涼しげな目元が印象的なクールビューティーだ。

史哉より三つ年上の三十六歳の理恵子は取締役の秘書を歴任し、史哉が社長に就任すると同時に社長秘書となった。副社長時代の秘書がちょうど産休に入るタイミングでもあった。
付き合いはまだ浅いが、優秀な秘書である。


「社長、郵便が届いております」
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