気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
彼女は手にしていた薄い封筒をデスクに置いた。
ゆったりとした動作でそれを取り、差出人を確認して目を瞠る。レターオープナーを使う心的余裕はなく、史哉は即座に指で無理にこじ開けた。
「なにかお調べになっていらっしゃるのですか?」
「ああ」
中身は調査会社からの報告書である。沖縄から帰ってすぐ依頼した案件だ。
急かされる想いで二枚にわたる報告を一読している間に、史哉の真剣な様子を察した理恵子が静かに退室する。と同時に――。
(……なに?)
ある一部分が史哉の目をさらった。
(結婚していないのか……)
それは美織の身辺を調査させたものだった。
あるはずの夫の記載はなく、美織がシングルマザーであるのは明白だ。
「……二歳半?」
彼女の息子の年齢を思わず呟く。雷で射貫かれたような感覚が胸に走った。