気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
渚の勘が鋭いのか美織がわかりやすいのか、渚に突っ込まれて目が泳ぐ。
「あ、いえ、作品作りが思うようにいかなくて」
これは本当だ。最近、物思いに耽ることが多く、製作途中に油断してガラスを割ってしまうことが度々ある。集中できないのだ。
「そう……。でも、焦らなくても平気じゃないかな。美織さんの作るガラス細工、私はとっても好きだもの。うちに来るお客さんの中にも美織さんの作品のファンがいるんだから」
「ありがとうございます」
美織を励ますためにちょっとオーバーに言っているとは思うが、素直にうれしい。影が差した心を明るくするのは、美織にとってやはり琉球ガラスだとしみじみ感じる。
「もしもほかになにか悩んでいるなら、気楽に相談してね。大したアドバイスはできないかもしれないけど、話なら聞けるわ。ひとりで悩むよりふたりのほうがいいでしょう?」
渚はカラッと笑い、「さ、おいしいタコスを食べましょ」とツナタコスを口に運んだ。
心の内をなんとなく見透かされているように感じながら、美織も彼女に続いた。