気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

バンクーバーで出会ったときも恋人でいたときも、絶対に明かさなかった肩書きだ。それを今になって堂々と……。

史哉によれば、恩納村にオープンするリゾートホテルで辰雄の作る食器を使いたいと言う。リゾートの一画に作品のギャラリーも構えてはどうかと。

もっと詳細に話をしたいと史哉に請われ、辰雄は工房の一画にある小さなスペースに置かれた椅子に彼を案内した。

用意してきた資料をもとに説明する史哉を遠巻きに眺めながら、複雑な心境に包まれる。

世界を股にかけた一流ホテルのラ・ルーチェと取引ができるのは、普通に考えたらとても光栄な話。そこから琉球ガラスや辰雄の作品の良さが広がり、新たな未来に繋がる可能性がある。

しかしだからといって、手放しでは喜べない。史哉の目的がわからないからだ。
どういうつもりでそんな提案をするのか、美織には見当もつかない。

辰雄の作品を純粋に気に入り、あくまでもビジネスとしての話なのか。それともなにかほかの思惑があるのか。

気の利かない美織に代わって悦子がお茶を淹れ、再びギャラリーへ戻っていく。ふたりの話が気になり、美織は工房の仕事がなにひとつ手につかなかった。
そうこうしているうちに数時間が経ち、陽向の迎えの時間となったため、悦子にだけひと声かけて工房を出る。
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