気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
つい必死になるが、彼の美しい横顔は涼やかなまま。まったく動じていない。
「美織はそんな女性じゃない」
「買い被りすぎです」
「どうしても違うというのならDNA鑑定をさせてくれないか。たしかな証拠を見せられない限り、僕は納得できない」
赤信号で車を止め、史哉が美織を見る。真実を探ろうとする視線は強く、それでいて懇願するように切実だ。
たぶん彼の中で、その答えはとっくに出ている。陽向は自分の息子だと。
証拠があろうとなかろうと、親子というものはなにかしら感じるものがあるのかもしれない。
真っすぐに向けられる目を見ていられず、先に視線を逸らしたのは美織のほうだった。
膝の上にのせた手をぎゅっと握ると同時に、車が再び走りだす。
「僕の前から姿を消した理由を話したくないというのなら、それでもいい。でも未来まで閉ざして目を背けるのは陽向くんのためにもならないんじゃないか」
「……陽向を私から奪わないでください」
強い意思を持って発した言葉なのに、か弱く震える。陽向の父親だと確信している彼の自信に太刀打ちできるのか不安でたまらない。