気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
ラ・ルーチェと取引をはじめれば、必然的に史哉との付き合いがこの先も続くことになる。もちろんそれは仕事上のものに過ぎないけれど。
陽向の父親だと確信している彼と、これからの関係をどうしていったらいいのかわからない。
「ラ・ルーチェとなにかあったの? ひどい条件だったとか」
「いえ、そうじゃないんです」
急いで否定して首を横に振る。
史哉から提示された契約条件の書類を見たが、工房にとって不利なことはなにひとつ書かれていなかった。むしろ好条件だったと言ってもいい。
リゾートホテルのレストランで使う食器を通常販売しているより一割も高い価格で買い取り、ギャラリーのテナント料も一流ホテルとは思えないほど破格だった。美織が陽向とふたりで暮らしているアパートの家賃より安い。
でも、そこがかえって怪しいと勘繰ってしまう。
史哉は口では違うと言うが、陽向を後継者として美織から奪うつもりでいるのではないか。美織に職業や肩書きを偽っていたくらいだから、嘘はお手の物だ。
「それじゃ、イケメンホテル王にしつこく誘われちゃったかな?」