気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

夏はとっくに終わっている。
聞き返した美織に史哉はふわりと笑った。


「国際通りで夏物商品の処分をしていてね。思わず買い占めてしまったんだ」
「そんなにたくさん?」
「ちょっと多かったかな」


残り物をすべて買い上げたらしい。子どもじみた買い物だと恥じているのか、得意げというよりは照れくさそうに鼻の下を擦った。


「陽向くん、花火は好き?」


地面に置いた紙袋を大きく開く。
陽向は引き寄せられるように彼のもとに走った。


「はなびだー。いっぱい!」


中を覗き込んで歓声をあげる。

今年の夏、渚や彼女の娘の萌花と四人でやった花火が陽向の初体験だった。
最初は怖がっていたが、面倒見のいい萌花の優しい手ほどきで一転。すべてやり終えても『もっとやるー』と駄々をこねて美織を困らせた。そんな夏がもうずいぶん前に感じる。
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