気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
「一緒にやろうか」
「うん! やるー!」
〝ママ、いいでしょ?〟という視線が、振り返った陽向から飛んでくる。
『陽向くんにとっては、なににも代えがたい父親』と言った渚の言葉が頭を過った。
間に入ってふたりを裂く権利は美織にはない。ましてや史哉は美織の妊娠を知らなかったのだから。彼から放棄したわけではないのだ。
「それじゃ、ここでやったらいい」
辰雄は工房の敷地を指すように指を下に向けた。
「おじい様もご一緒にいかがですか?」
「いえ、私は遠慮しますよ。早いところ汗も流したいですしね」
「そうですか。それではお言葉に甘えて場所をお借りします」
その後、史哉と二言三言挨拶を交わし合った辰雄は「お先に」と帰っていった。
その場に三人で残され、心許ない美織とは対照的に、史哉は陽向と早速花火の準備をしはじめた。