気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
美織は、工房からほど近いアパートに息子の陽向とふたりで暮らしている。
八畳の洋室にダイニングキッチンのある部屋は、幼い子どもとふたりには十分な広さだ。
美織が小学生のときに訳あって両親と三人で東京へ移り住んだが、高校生のときに母親を、大学生のときには父親を病気で亡くしている。
大学を卒業後に東京で就職した美織は、陽向をお腹に宿した二十四歳のときに沖縄に戻ってきた。
祖父母は一緒に暮らそうと言ってくれたが、わがままを押し通して陽向を産んだため、できる限り自立して生活したかった。
夕食も入浴も終え、陽向と並んで布団に入る。絵本の読み聞かせは、美織が欠かさない日課である。
「ママ? それからどうしたの?」
陽向は大好きな恐竜のぬいぐるみを抱え、美織を不思議そうに見つめた。
その声で我に返る。今日再会した史哉のことが頭を過り、中途半端なところで物思いに耽っていた。
「……あ、ごめんね」
陽向の頭を撫でて謝り、取り繕ってページをめくる。