気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

「〝囲炉裏に姿を隠していた栗が、灰の中から猿を目がけて飛び出しました。火であぶられた栗の熱さと痛さで、猿はたまりません。呻き声をあげながら、水で冷やそうと水がめの蓋を開けました。すると今度は……〟」


陽向に急かされて先を読み進めた。
最近の彼のお気に入りは『さるかに合戦』。悪さをした猿を懲らしめる勧善懲悪の世界に、すっかりはまっているらしい。毎晩ねだられ、何度も繰り返し読む絵本だ。


「めでたしめでたし」


猿を無事成敗し、美織が物語を締めくくると、陽向はパチパチパチと拍手喝采。「よかったねー、ママ」と目をキラキラさせた。

純真無垢な眼差しに毎度心が洗われる。美織は、この笑顔を守るために生きていると言ってもいい。


「さぁ、そろそろ寝ようね。明日も保育園だから寝坊したら大変」
「うん! ママ、あしたもね」
「そうね、明日もさるかに合戦を読もうね」


美織が毛布を掛けなおすと、陽向はぬいぐるみと一緒に手を中に入れた。
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