気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
「おやすみ、陽向」
「おやすみ、ママ」
挨拶を交わし合ってほどなくすると、隣から穏やかな寝息が聞こえてきた。
ほんのり灯ったスタンドライトの下、陽向のあどけない寝顔を眺める。
涼しげな目元や高く通った鼻筋はこの頃、父親の面影が色濃く出はじめてきた。ふとしたときの表情にドキッとすることもある。
このまま成長したら、きっと彼にそっくりの大人になるだろう。そんな姿を想像して、胸の奥がざわめく。
(だけど、あんな場所で会うなんて……)
今日の午後、意図せず再会した彼の姿を思い出すだけで、切ない想いが込み上げてくる。
もう過去のこと。自分とはなんの関係もない。
そうやり過ごそうとするのに、頭も心も簡単には切り替わってくれない。
目を閉じると浮かぶ彼の姿。再会が連れてきた胸の痛みが、美織をゆっくり過去へと引き戻していった。