気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

気持ちの乱れをどうにもできず、落ち着くためにいったんふたりから離れた。

レストルームの鏡には、戸惑いに揺れる美織の顔が映る。

(あの写真は、たまたま残していただけ。きっと消すのを忘れただけなの。だって、そうじゃなきゃ辻褄が合わないでしょ)

遊び相手だからこそ深い意味を持った写真ではなく、わざわざ残しておいたのとはわけが違う。どうでもいい写真だから残っていたのだ。
もしくは、あまりにも奇怪な表情のため魔除けの意味があるとか。

そのどちらかだと結論づけて心を整理し、美織はふたりのもとへ戻った。

先ほどの水槽ではジンベエザメの給餌がはじまり、大きな口を開けたサメが体を垂直にさせる光景に出くわす。
圧巻の食事シーンを前にして、史哉に抱っこされた陽向は口を半開きにして目を輝かせていた。

チラッと盗み見たふたりの横顔がよく似ていて、美織を平静ではいさせてくれない。

これから自分たちはどうなってしまうのか、白く霞んだ未来が美織を不安にさせる。彼が陽向を大切に想う父性愛がひしひしと伝わってくるから余計に。
たとえ美織が自分の気持ちを認めようが、史哉の愛はそこになく、延々と続く一方通行の想いだけになる。
でも――。
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