気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
少しずつ心を開いてきてはいるものの、以前のような関係には程遠い。美織は今もなお史哉に一線を引いている。
彼女が史哉をどう思っているのかもわからない。嫌われてはいないと感じるが、それが好意と断定できずにいる。
陽向の父親だから仕方なく付き合っている側面も見え隠れし、それが史哉を焦らせるのだ。余裕のあるふりをして、じつは美織の本心が気になってしょうがない。
そんなフラストレーションが抑えきれなくなったのが十日前。一緒に行った水族館の帰り、彼女のアパートで別れ際に思わず抱きしめてしまった。
陽向が『ママ』と声を出さなければ、そのまま唇まで奪っていたかもしれない。じっくり向き合うと心に決めておきながら、ちぐはぐな自分の言動に悶々とした。
ただ美織は夫としてはともかく、史哉を陽向の父親としては認めてくれているようではある。その特権をフルに活用して、陽向ともども美織を絶対に手に入れてみせると改めて心に強く誓う。
「そうか。では楽しみに待つとしよう」
「そう遠くない未来だと思っていてください」
破顔した浩一郎に、史哉は自己暗示をかけるつもりで言った。