気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
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水族館へ行った日から早くも二週間が経過。仕事が忙しい彼は、沖縄を訪れても工房やアパートに顔を見に現れるだけでとんぼ帰りしている。

ゆっくり話せる時間はなかなか取れていないが、指切りして約束した食事だけは一度だけ三人で行った。
築一〇〇年を超える古民家でのディナーは、島野菜の天ぷらやゆし豆腐、サトウキビご飯などの体に優しいメニュー。『おにいちゃんのとなりがいい』とすっかり史哉に懐いた陽向の様子を見ているうちに、ずっと前から一緒に過ごしてきたような錯覚を起こした。

三年間も離れ離れだったのが嘘のように、いたって自然にごく普通の家族みたいに。ただひとつ違うのは、陽向が彼を〝おにいちゃん〟と呼ぶ点だけ。

このまま本当に家族になれるかもしれない……。

淡い期待は、どうにも打ち消せないくらいに美織の中で大きくなっていた。


「瀬那さんの話を受けようと思う」


祖父にそう言われたのは、陽向を保育園に迎えにいき、工房に戻ってきたときのことだった。

恩納村にオープンを控えているラ・ルーチェのリゾートホテルで、工房の食器を使いたいと史哉が持ち掛けてきた件だ。
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