気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

アンティーク加工を施された木やレンガを使ったインテリアと、少し暗めの照明がムード満点のレストランでは、仔牛の膵臓のローストやシーフードチャウダーに舌鼓を打つ。軽く一杯だけ飲んだクラフトビールと異国の地にいる高揚感か、時差ボケも忘れて華やいだ気分でホテルに戻った。

ダウンタウンでもっとも賑やかなロブソン通り沿いに建つそこは、十メートルはあるロビーの天井高が解放的でスタイリッシュなホテルである。

海外にいる解放感のせいか部屋でおとなしくしている気分でなく、そのまま最上階にあるバーに向かった。ホテル内であれば防犯面などの心配もないだろう。

入店してすぐ大きな窓と向い合わせになったカウンターに案内される。バンクーバーの夜景が見渡せ、眺望は抜群だ。異国というだけで目に入るものすべてが美しく見える。

ほどよく照明が落とされた店内にいるのは、カップルや一人客が何組か。それほど混み合ってはいない。
注文したジンフィズが目の前に置かれ、バーテンダーが去ったときだった。


『キミ、かわいいね』


唐突に声をかけられて面食らう。


『ひとり? 日本人だよね?』
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