気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
隣の席に座った男性が美織の顔を覗き込む。
欧米の人は総じて大人びて見えるため年齢ははっきりしないが、二十代後半から三十代半ばくらいだろう。古代ギリシャの彫刻のような顔立ちの男性だ。
「あ、あの……」
英語ならまだしもフランス語で話しかけられたため、なにを言っているのかまったくわからない。
(なんて言ってるんだろう。……もしかして〝綺麗な夜景でしょ〟とか? それとも私がなにか困っているようにでも見えたのかな)
不穏な空気は感じないが、美織はナンパだと気づかない。
『すみません、フランス語は話せないんです』
つたない英語で返すと、男性は〝なるほど〟といった様子で頷いた。
『それじゃ英語なら大丈夫?』
『少しだけなら』
英語に切り替えた彼に、親指と人差し指で〝ちょっと〟とボディランゲージも示す。