気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
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ゆらぎのある形が、ふんわりやわらかな光を通す。
完成した器を両手で抱えて窓辺でかざすと、閉じ込めた気泡の向こうに青い空とコバルトブルーの海が透けた。

鮮やかな色彩にぬくもりのある形状は琉球ガラスならでは。吸いつくような感触や滑らかな質感が手に心地いい。

グラスや一輪挿し、プレートなどを緩衝材と一緒に慎重に箱詰めし、美織は丁寧に封をした。

段ボールで三つ分になったそれらを車の後部座席に乗せ、運転席に乗り込む。


「じゃ、おじいちゃん、行ってくるね」
「ああ、頼んだよ。気をつけてお行き」
「うん。そのまま陽向のお迎えもいってきちゃうから」


美織が声をかけると、祖父の夏川辰雄(たつお)は彫りの深い顔立ちに皺を寄せた。

ブレーキペダルを緩めて車をゆっくり発進させた左側にはギャラリーがあり、窓から祖母の悦子(えつこ)が手を振るのが見える。緩くパーマのかかったシルバーヘアに柔和な顔立ちをした彼女がそっと微笑んだ。

夫婦は長年連れ添っているうちに顔が似てくると聞くが、美織の祖父母はまさにその典型。辰雄が小柄なため、遠目で見るとそっくりである。
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