気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
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ホテルで朝を迎えた史哉は着替えを済ませ、スマートフォンを肩で挟みながら腕時計を嵌めた。


「ああ、急で悪いが、午後の打ち合わせまでには必ず帰る」


通話の相手は秘書の理恵子である。

朝一で来客が一件入っているため、当初は昨夜のうちに東京へ戻る予定でいた。美織の誤解を解き、自分の想いを伝えられればそれでよかった。

しかし陽向が火傷を負う事故が勃発。その半分も目的を遂げていないため、たった今、理恵子に予定変更を告げたところである。
これから美織と陽向が暮らすアパートへ行き、プロポーズの仕切りなおしをするつもりだ。


『かしこまりました。社長の人生を賭けた大一番は最優先すべきものですから。先方様のことは私にお任せくださいませ』


〝人生を賭けた大一番〟

大事な用事と伝えたはずが、若干仰々しい言い方に変換されたため思わず笑みが零れた。まさにぴったりな表現だ。頼もしい彼女の言葉もありがたい。
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