気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
仕事ならまだしも、普段の史哉であればその程度のタイムロスはなんとも思わないが、このときばかりは気持ちが急いて仕方がない。今まさに会いにいこうとしていたふたりが、向こうからやって来た喜びのせいだ。
ようやく一階に到着し、エレベーター内の人たちを全員降ろしてから自分も降り立つ。悠然としたスマートな仕草に見せかけて、内心とても慌てていた。
その証拠にいつも以上に歩幅は広く、足取りも格段に速い。
多くの人が行き交うロビーで、ふたりは太い柱の前にいた。
どれだけの雑踏にいようが、美織と陽向を見つけられる自信が史哉にはある。国際通りで再会したあの日、沖縄の景色の中で美織のいる場所以外が霞んで見えた。彼女しか目に入らなかったのだ。
今もそう。ふたり以外は目に入らない。
史哉を見つけ、一目散に駆け寄ってきた陽向を抱き留める。
「おにいちゃん!」
「手は痛くないか?」
包帯を巻かれた右手をそっと取った。
「もういたくない。おとこのこだから」
「よし、さすが男の子だ。強いな」