気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
「はい。陶器にはない清涼感も魅力のひとつです。ガラスを通して光のコントラストを視覚化できるのも琉球ガラスならではだと思います」
「ええ、わかります。ほかの工芸品もそうでしょうが、高度で熟練された技が求められるんでしょうね」
「高温のガラスを冷めないうちに成型していくのは、相当な技術が必要とされます。琉球ガラスは……」
深く感心しながらグラスを見つめる男性に、つい調子に乗って琉球ガラスの歴史や成り立ちを話す。沖縄工芸としては比較的歴史が浅く、ここ一〇〇年の間に製造がはじまったと説明すると、彼は興味深そうに続きをねだった。
「なるほど。お嬢さんのお話を聞いて、琉球ガラスの奥深さが伝わってきます」
「あ、いえ、なんだかすみません。ペラペラと得意げにお話しして」
大好きな琉球ガラスのことになると、いつもこうだ。聞き上手な相手だから余計に。
我に返り、とてつもなく恥ずかしい。
「情熱を傾けるものがあるのは素晴らしいことです。胸を張っていいんですよ」
「ありがとうございます」
「ところでこの作品の中に、お嬢さんが作ったものはありますか?」
「私のものでしたら、先ほどお客様がお手に取ったものがそうです」
青系の粒ガラスをちりばめたグラスだ。
男性はその隣のグラスを持ち上げた。
「では、こちらの赤系のものも?」
「はい。一応ペアを意識して作りました」
「では、こちらをいただいていきましょう」
「ありがとうございます。すぐに包装いたしますね」
優しい笑みを浮かべた男性に、美織も微笑み返した。