気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

一月も下旬になると、沖縄は他の都道府県に先駆けて桜が開花する。
ある夜、美織は陽向とふたりで渚の自宅に招かれていた。彼女の自宅の庭には八重桜があり、お花見パーティーに誘われたのだ。

五分咲きになった桜が夜空に彩を加え、庭に敷いたレジャーシートには渚の手料理がずらりと並ぶ。


「もう、陽向ってば、口の周りにケチャップがついてるじゃないの。ほんとしょうがないんだからぁ」


先ほどから陽向は渚の娘の萌花にあれこれとお世話をされっぱなし。小学一年生の彼女にとって、放っておけない存在のようだ。


「――っ、やめて。もか、いや」


ナフキンで口元を拭われるが、おいしいご馳走を前に手が止まらず、必死に抵抗している。


「ちょっと陽向、何度言ったらわかるの? 呼び捨てじゃなくて〝もかちゃん〟とか〝もかおねえちゃん〟でしょ?」
「もか、うるさい」


両腕を腰に添えて諭す萌花に陽向は容赦がない。いわゆる魔の二歳児なのか、この頃よく〝いや〟を繰り返すようになった。
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