気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
陽向は残念がるだろうが、今は治すのが先決だ。
『美織にも会いたかった。話したいこともあったんだ』
「またすぐ会えますから。とにかく温かくして寝てください。東京はまだ寒いですよね」
『わかった。おとなしく寝てるよ』
通話を切りスマートフォンをバッグにしまう。
「瀬那さん、どうかしたの?」
「風邪ひいちゃったみたいで……。今夜はこっちに来られないみたい」
「あら、そう。心配ね……」
悦子が顔を曇らせる。
すぐに駆けつけられない距離にいるのを今初めて実感した。
大事な家族が体調を崩しているのに、その面倒もみてあげられない。大人とはいえ、具合が悪いときは誰でも心細いもの。史哉も今頃寂しい思いをしているのではないか。
そう考えると、たまらなく悲しくなる。
風邪だと言っていたが、美織を不安がらせないための嘘で、もしかしたらもっと重篤な病気の可能性だってある。