気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

美織はその手に振り返し、『琉球ガラス工房ゆくる』の敷地内を出た。

ここは沖縄の読谷村(よみたんそん)。赤い瓦屋根が目印の工房は背後に海を臨み、空港からのアクセスも一時間弱の好立地にある。

〝ゆくる〟は沖縄の方言で〝休む〟や〝休憩〟といった意味で使われ、その名の通りゆったりとした時間が流れる工房は、美織にとって大切な場所だ。

併設したギャラリーで作品を販売するほか、『ぜひうちの店に置かせてほしい』と乞われ、工芸作品を数多く扱うセレクトショップにも卸している。
今日はその店に注文の品を届けにいく日である。

十月中旬の沖縄は台風シーズンが一段落した頃。朝晩は比較的過ごしやすくなってきたとはいえ昼間の車中はさすがに暑く、美織はエアコンの設定温度を一気に下げた。

生ぬるい風に前髪を弄ばれながら、海を右手に国道を南下。目指すは沖縄でもっとも賑やかな、那覇市にある国際通りである。約一.六キロの通り沿いにお土産店や飲食店などが並び、観光客にも人気のスポットだ。

目的のセレクトショップ『コレッタ』は、その通りのちょうど中間地点にある。

車を止め、商品を詰めた段ボールをカートに載せる。白いクロップドパンツに合わせた白黒のギンガムチェックのシャツを風になびかせ、カラカラと音を立てて歩道を進んだ。
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