気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
二十畳くらいだろうか。なにもないフロアの一番奥に、美織のよく知る形状をしたものが置かれている。
「これ、溶解炉ですか? こっちは徐冷炉?」
「そう。琉球ガラスを作るための廃ガラスの手配もあたりはつけてある。いつでも空輸できるから、ここで好きなだけガラス細工を作れるよ」
信じられない光景を目の当たりにして言葉が出てこない。
離れて暮らしていたのに、史哉は美織がいつでもこちらで生活できるように準備してくれていたのだ。あくまでも美織の気持ちの変化があるまで黙っているつもりだったのだろう。
高ぶる気持ちを抑えきれない。
「気に入らなかった?」
いつまでも茫然としていたせいか、史哉が心配そうに美織の顔を覗き込む。
「こんなのずるいです……」
首を振りながらなんとか声を振り絞る。