気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】
肩甲骨まである栗色の髪をひとつに束ね、眉毛とリップグロスだけという薄いメイクの美織は、目鼻立ちの整った正統派の美人である。カジュアルな格好をしていても人の目を引くため、コレッタに到着するまでに観光客らしき人たちが何人か振り返った。
本人にその自覚はなく、〝工房で顔に汚れを付けたまま来ちゃったかな〟と思いつつ手で頬を拭い、木製のドアを大きく開けた。
「こんにちはー。いつもお世話になってます、ゆくるです」
美織に気づいた二十代前半のアルバイトの女性が、奥に向かって「渚さーん、美織さんですよー」と声を張り上げる。すぐにこの店のオーナー夫人である新井渚が現れた。
三十歳の彼女は、一重瞼の目元に細く通った鼻筋の涼しげな美人。耳まで出したベリーショートの髪の耳元でフープピアスが揺れる。
一六〇センチの美織より頭半分ほど背が高く、一七〇センチを超す身長とスタイルの良さはモデル並み。白いTシャツにデニムというありふれたスタイルなのにセンスが良く見えるのは、内面からにじみ出る品の良さの賜物だ。
「美織さん、遠くまでありがとう」
「いえ、車で一時間もかかりませんから。いつもありがとうございます」