気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

「ひとつですか」
「あっ……そうですよね、ごめんなさい。ひとつなんて気が利かないですよね」


美織としたことが、なぜペアで買わなかったのか。史哉に言われて初めて気づく思慮の浅さに、我ながら呆れる。


「次に美織さんと会ったときにペアで使えるとうれしかったんだけど」
「えっ……」


バンクーバーへまた来ることがあれば、案内してくれるとはたしかに言っていたが。
でもきっと違う。今のもこれまで同様にちょっとしたジョークだと、必死に心臓を宥める。


「このまま終わらせたくないと思っているのは僕だけ?」


彼とはこれきり。バンクーバーを離れれば、それまでだと思っていた。
そう言い聞かせ、心の奥のほうで芽生えそうな恋心を懸命に摘み取ってきた。

でも、それももう無理。史哉に真っすぐ見つめられ、急速に胸が高鳴っていく。
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